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第3新創業市からのお知らせ
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レポート:『10年間自転車を漕ぎ続ける技術。諦めないメンタル』(’19 みんなのビジネススクール第1回)
11月14日(木)、台風により延期になった第1回「10年間自転車を漕ぎ続ける技術。諦めないメンタル」を開催しました。
ご登壇いただいたのは、先輩経営者として湯河原でお豆腐屋さん「湯河原 十二庵」を営む浅沼宇雄さんと、メンタルヘルスの専門家として「NPO法人ママズハグ」代表の山本加世さんのおふたりです。
テーマは「創業体験談」と「メンタルヘルス」の2本立て。起業すると誰の前にも現れる、壁、壁、壁…それを浅沼さんがどう切り抜けたのか、リアルな経験談から学ぼう!という回です。さらに、浅沼さんの経験談を参考に、周りの人たちとのコミュニケーションについて専門家である山本さんの解説とアドバイスも聴けました。(レポート:第3新創業市 寺田まり子)
《当日の流れ》
■起業するまでの浅沼さんのプロフィール
■起業してから現在までの浅沼さんの歩み
■浅沼さんの経験談をメンタルヘルスの側面から山本さんが解説&日常で使えるtips
前半は浅沼さんの起業から10年間の経験談をじっくりお聞きしました。
《 浅沼宇雄さん:湯河原十二庵 代表 》
2009年10月、食の安心・安全をコンセプトに豆腐屋『湯河原 十二庵』を独学にて開業。 消費者に直接、自分達の手で販売することをテーマに小売中心で移動販売、出張販売、催事販売などを展開。 また、カフェなど今まで豆腐屋となかなか繋がらなかった業態への挑戦も。
浅沼さんは10年前に未経験からお豆腐屋さんを始め、現在では店舗に加えて県内各地での小売のほかに飲食店の経営も行っています。今年の10月には全国豆腐品評会で銀賞を受賞され、はたから見るととても順風満帆そう。ですが、実はこの10年間には数々のトラブルや困難を乗り越えてきました。
・雇用した職人の退職
・自身の右足骨折
・東日本大震災
・妻がヘルニア発症
・出店ラッシュを経て投資に回収が追いつかなくなり資金がショート寸前
・外側に向きすぎた事業展開のために十二庵内部の組織がガタつく
小さく始めたお豆腐屋さんとしては重たすぎるトラブルが立て続けに…。この10年で、楽だったときはないですね!と笑う浅沼さん…つ、つよい。
浅沼さんのすごいところは、こんなに災難が続いたのにお豆腐屋さんの営業を絶対にあきらめなかったということ。これだけの出来事があれば、きっと辞めるタイミングはいくらでもあったと思います。でも困難に直面するたびに「辞めない」「あきらめない」という選択を続けてきた。続けられる条件が揃ったから続けます、ということではなく、「辞めない」をまず決めてどうしたら乗り越えられるかを常に考えてきたのが浅沼さんという人でした。
“モチベーションをどう上げたんですか”という質問に対して、“モチベーションは…上がんないすよね…”という浅沼さんの言葉が印象的でした。ピンチのとき、心は折れそうになる。むしろ折れてる。折れた状態で何をどう行動するか、そこにしか答えはない、という姿勢に圧倒されました。ただそのあり方は、頑固で強い!というよりも、しなやかという表現のほうが似合います。芯はありながらその場ごとに柔軟に形を変えるしなやかさこそが、できることをひとつずつ重ねて、気づいたら切り抜けていた、という浅沼さんの10年間を支えてきたのだと感じました。
後半は、ピンチのときに浅沼さんが何をしていたのか、脳科学、皮膚科学、心理術、行動・社会心理学の観点から山本さんが解説。浅沼さん最大のピンチ、社内の従業員さんとの信頼関係が崩れかけたときのコミュニケーションのあり方を中心にお話くださいました。
《 山本加世さん:NPO法人ママズハグ 代表理事 》
14年前にベビーマッサージの講師として開業。脳科学、皮膚科学、心理術、行動・社会心理学を融合させたTouch学の研究を始め、現在230人のインストラクターを輩出、2,100人のママ達にベビーマッサージのワークショップを開催する。子育てイベントや育児の悩みを解消する「ママ学校」のほか、社会人向け、中高生向けなど多世代に向けて講座を行っている。
聴いている人がすぐにでも取り入れられる実践的なアドバイスも多く、家族や友人、同僚とのコミュニケーションでやってみよう、と思った参加者の方も多かったのでは。
その山本さんが解説されていた浅沼さんの行動のなかに“理解せず、ただ知る”ということがありました。浅沼さんは従業員との関係に陰りが見えた時期、従業員と個別に話す時間を定期的に設けるようにしたそうです。そこではただひたすら相手の正直な言葉を待ち、聴き続けました。コミュニケーションを密にして報告や相談しやすい空気を再構築したことで、1年をかけて社内の雰囲気はずいぶん変わったそうです。
山本さんは、実は他人を理解しようとする、というのは同時に自分の常識の枠で相手をジャッジすることでもあると言います。だから理解できない、と思うと批判したり反論したりして互いに苦しくなってしまう。一方で浅沼さんはそもそも理解をゴールとはせず、ただ相手の話を聴く、相手の思いを知る、ということを丁寧に重ねていました。最大のピンチを乗り越えた鍵も、やはりこのしなやかさ。山本さんが最後におっしゃっていた「あきらめないメンタルは、強い意志よりもしなやかなコミュニケーション」というまとめには全力でうなずきました。
正直なところ、「10年間自転車を漕ぎ続ける技術。諦めないメンタル」というタイトルから、どうしたらあきらめないメンタルを身につけられるか、みたいなことを学べる回かと思っていました。でも今日わかったのは、あきらめないためには「あきらめない」しかない、というシンプルすぎる真理。ただあきらめないと決めた自分をどう走らせていくか、という工夫はあるな、ということも山本さんのパートで感じました。そしてあきらめずに困難を乗り越えることでパワーアップできることだけは確かだな、ということも感じました。
浅沼さんは“起業する人ってみんなどこかしらバカ”と笑っていましたが、強さよりもそんなふうに笑い飛ばせちゃうしなやかさこそが「10年間自転車を漕ぎ続ける」秘訣なのだと思いました。
今年の『みんなのビジネススクール』もいよいよ大詰め!最終回も参加募集中です。最後は小田原・箱根で起業したい方にはぜひ参加していただきたい「ローカル起業」をテーマにしたセッションです。
●11月30日(土)14:00-16:00 「ローカル起業を成功させる心構え」
講師:小野裕之さん(greenz.jp ビジネスアドバイザー)&山居 是文さん(株式会社旧三福不動産 共同代表)
詳細&お申込みはこちらからどうぞ!