Skip to content
  1. HOME
  2. INTERVIEW

創業者インタビュー

おだわら・はこねではじめたひとたち

酒井 優太Interview10株式会社RiceWine

日本酒をもっと世界へ!「日本人としての強み」を突き詰めて異業種から参入した挑戦者。


 
インターネット業界で約8年働いたあと、1年間の起業準備期間を経て酒井優太さんがたどり着いたのは『日本酒』。日本酒を海外にもっと広めようと〈株式会社RiceWine〉を立ち上げたばかりです。前職での海外勤務を経て、世界で勝負するなら日本人であることを生かしたビジネスを、と選んだ商材。まったくの異業種からの参入ですが、“あとは選択を正解にするだけ“と話すその瞳に不安は見えません。まさにこれからビジネスが動いていく、というタイミングで、リアルな今について話してもらいました。
 
 

世界を相手にするなら、日本人であることを活かして勝負する

 
ー2018年8月(インタビューの数日前)に会社の登記が完了したばかりということですが、これからどんな事業をされていくのでしょうか。
日本酒を海外に広めていきたいと思っています。日本酒って、国内の需要はどんどん下がっているんですが、実は世界に和食が広まっていくにつれて輸出量は増えています。ただ規模としては、ワインがフランス国内だけでも1兆円のマーケットがあるのに対して、日本酒はまだ世界で180億円程度。今はまさに日本酒の需要が世界に広がっていくスタートにあるときで、僕もその一翼を担いたいと思っています。具体的には、まずは委託醸造(※)という形でオリジナルの日本酒を造り、レストランなどを対象に海外販売をしていく予定です。とにかく、まず造って売ってみる。まあたぶん一番最初はまったく売れないとは思うんですけど(笑)。
 
※委託醸造:既存の酒蔵に委託して、オリジナルの酒を醸造すること。
 

酒井さんが醸造を委託している、足柄上郡大井町の「井上酒造」。1789年創業の老舗の酒蔵だ。
 
ー日本酒を事業として選んだのは、もともとお酒好きだったのがきっかけですか?
いや、それが実は僕はあまりお酒飲まないんですよ(笑)。ただ、商材としての日本酒にものすごく可能性を感じているんです。日本の人口がどんどん減っていくなかで、国内だけを対象にしてもきっと30年後にはビジネスは厳しくなっている。だから、ビジネスは海外を相手に、とずっと思っていました。ただ前職で海外赴任をしたときに、語学や文化ですごく苦労して。戻ってきてからも英語は相当勉強しましたが、それでもやはりアメリカの大学を出た方や帰国子女の方には足元にも及ばないレベルなんですよね。そう考えた時に、コミュニケーションでガチンコ勝負しても勝てないな、これから海外で戦うなら日本人ならではのビジネスをしないと、と痛感したんです。そんな視点でどんな事業がいいかリサーチしていると、コンサルなどの異業種から日本酒業界に参入している人達がいることを知り、それをきっかけに日本酒に興味が湧いて。調べてみると、海外市場にポテンシャルがあって、これから絶対に伸びると確信できた。そこで、自分もやってみようと思えたんですね。その後、試しにいろいろ飲んでみるなかで「こんなお酒を世界に広めていきたい」と思えるような本当に美味しいお酒に出会えたこともあり、心が決まりました。
 
 

「素人であること」はむしろ強みとして生かせる

 
ーそれは大胆な選択でしたね。
そうかもしれないですね。ただ、何度考えても日本酒を選んだことは間違いじゃないと思えるんです。8年くらいの社会人経験のなかで行き着いた結論なので、そこはブレないですね。
僕はずっとインターネット業界にいて、広告を制作したりWEBサービスの提供をしたりしていたんですが、インターネットの技術とかに関心や強みがあったわけではなくて。6年目くらいで、あれ、WEBサービスにはあんまり興味関心も適性もないのかもしれない、と気がついたんです。このままこの業界にいても自分の強みは活かせないな、と。だからここ3年くらいは、サービスじゃなくてモノを扱いたい、ってずっと思っていました。あと、人とのコミュニケーションが好きで営業も大好きだったので、手に取れるモノを自分で売る、というのは僕には合っていると思います。
 
ーなるほど、前職はまったくの異業種、日本酒マニアだったわけでもない、というところからの参入なんですね。
逆にそれも長所になり得ると思っています。実は、10月末から僕も杜氏さんと酒蔵に泊まり込んで一緒に酒造りをしていく予定で。やはり僕自身が酒造りのプロセスを見て知っていないと深くは話せないので、製造もやってみよう、と。日本酒って種類も多いし作り方も複雑で、ふつうの人にはちょっと難しいんですよね。そこを、素人である僕が現場で見て学んだことをわかりやすく海外に伝えていく。これは異業種から入ってきたからこその強みだと思うんです。こういう、日本人だからこそできることを僕はしたかったし、意味のあることだと思っています。

井上酒造の『箱根山』。10月末から3月末までの寒い時期が日本酒の製造期間だ。酒井さんにとって、濃くて長い初めての冬が始まる。
 
 

大先輩の背中に圧倒されて、踏み出した一歩

 
ー起業するにあたって後押ししてくれた人や、今現在助けてくれているのはどんな人ですか。
一番大きいのは、前職の先輩の存在です。独立して立ち上げた事業を大きくして株式売却した、すごく尊敬している方。本当は僕、自分で会社を始める前に2年くらいヨーロッパへ留学しようと思っていたんです。ですが、久しぶりにその先輩の会社にお邪魔したら、4年前に7人だった社員が150人に増えていて。圧倒されましたね。そこまでの過程や大変だったことなんかを聞いていたら、「ああ、やっぱり早く事業がやりたいな」とウズウズしてきて、留学するのをやめました。それから日本酒という選択肢に出会って。その先輩も日本酒には興味を持っていて「やるんだったら出資するよ」と言っていただいたので、それも後押しになりましたね。今はその増資の手続きをしているところです。
あとは、僕より先に独立した同期の親友にも手取り足取り教えてもらっています。彼からは投資を受けたりするわけじゃないんですが、対等な関係として率直な意見を聞かせてもらっています。
 

媒介者として、あまり表に出ることのない造り手と海外の橋渡しをしていきたい、と語る酒井さん。その言葉には迷いがなく、力強い。
 
ーちなみに、転職や起業するときの壁として「嫁ブロック」という言葉を最近よく聞くんですが、酒井家はどうでしたか?
それはうちに関してはゼロでしたね。もともと同じ会社で働いていて、そこが“独立して当然”みたいな社風だったこともあって、「私が稼ぐから、あなたは勝負しなさい」と言われていました。留学を考えていたときも、むしろ「留学よりも早く事業はじめたほうがいいよ」と起業するほうを後押ししてくれて。そういう考え方を尊敬していたからこそ、僕は彼女と結婚したんだと思います。僕らのスタイルは、いわゆるシーソーキャリア。妻の出産を機に僕が前職を辞め、1年間は育休期間に充てました。その間彼女がキャリアアップして。だから今は子どもの送り迎えとかお風呂、寝かしつけとか、子どもの面倒は結構僕がみてますね。でも今後彼女が2人目の子どもを妊娠、ってなったら次は僕が頑張る、みたいになるでしょうし。そこはいつもふたりで話し合っています。
 
ー8年間の会社員生活からの起業。働き方を変えて、今どんな違いを感じていますか。
誰からも期待されない、評価もされない、ってことがすごく新鮮ですね。組織に属してからは初めてじゃないですか、こういう環境が。その自由さがいいですね。その分もちろん自己規律も必要になりますけど。普段は「今日はちょっと映画観ようかな」みたいなモチベーション低めな日もあります(笑)。そこはビジネスがまだ動き出してないから。実際に人を採用したりすると、モチベーション低いなんて言ってられないですからね(笑)。
ビジネスの面では、これまではいち会社員として売上を上げて、利益を見て、みたいな視点しかありませんでしたが、経営者として出資を受け入れたり小売のビジネスを始めたりするために、会計ファイナンスを見るようになった点ではすごく変わりましたね。会社員時代は、取引先への支払いなんかは別の部署がやっていたので、小売のキャッシュフローなんて考えたこともなかった。先輩経営者の方々からしたら当たり前だと思うんですけど、本当に商売の基本をやっている感じで、勉強になります。
 
 

中小の酒蔵の日本酒が世界に出ていくための流通経路を作りたい

ビジネスはしっかり回しながら、気持ちはゆるりと、が酒井さんの目指すところ。舞台は世界。だけど無駄な力は入っていない。
 
ー最後に、酒井さんの今後の目標をぜひ聞かせてください。
まずこの1年は、自分で製造から販売までやってみて日本酒業界の課題を探してみます。2年目以降は、海外向けに日本酒を売る流通プラットフォームを作れないかと考えています。今のところ、海外で出回っている日本酒は大手のものばかりで、中小の酒蔵のお酒ってほとんど流通していない。でも、見たことのない日本酒を扱ってみたい、という需要はあると思うんです。だから、例えば香港のレストランがそのサイトにアクセスすると、100軒の酒造、200種類の銘柄の日本酒から好きなものを選べる。翌日には香港の倉庫からそれが届く、みたいな仕組みを作りたい。目標としては、香港とかマカオ、中国、台湾、韓国などに拠点を持って、それぞれの国で従業員の方を雇いたいですね。前職でも世界中に社員がいてみんなでオンラインで仕事をしていたので、そういうのいいな、って思います。まずはゼロを1にする作業が大事だと思うんですけど、ほどよく肩の力を抜いて、いい仲間たちと面白い仕事をしていけたらいいな、と思っています。



pagetop